こういう時代だからでしょうか、不眠、ストレス、神経性胃炎などのご相談や処方箋が多くなりました。当店の漢方の中で、今一番多いのが、神経内科系の相談です。ノイローゼ気味の方や、仕事と介護を抱えて脾虚、腎虚、肝気虚が重なった方、職場の人間関係でバランスを崩した方など。
漢方では血を十分作り、冷えやのぼせを取り除き、水の過不足をなくし、血と水をめぐらせると、気も流れだすと言われています。不思議なくらい人間の体は、ある意味単純で、これらの要素を充実させると、表情やお話の内容が落ち着き、順を追って体調が良くなります。
「気は脾を破る」と言われますが、ストレスは消化システム全般を失調させます。脾の機能が落ちるので、①循環や排出できなくなった「水」が滞ったり、②血が生産されなくなり、血虚や瘀血となったりして、結局、「気虚」「気滞」となるようです。
だから例えば、「水滞」の方は、水を抜き、循環させるとむくみが取れるとの同時に、気がめぐりはじめます。また、気が滞りがちの方は、半夏や厚朴などで「気滞」を取り除きます。「血虚」「冷え」の方は、アミノ酸製剤に温める生薬の入った柴胡系の漢方を、気が上がり、イライラと他を攻撃しがちな方は、「血と気」の漢方などなど。
病名への対症療法ではなく、弱ったところを助ける生薬を補充するのが漢方です。精神や神経は体から独立してあるのではなく、体全体の影響を受けて、恒常性を保っています。バランスを崩したと感じた時は、体全体が四方八方手を尽くして改善しようとしても崩れてしまった後なので、時間はかかりますが、徐々に体のいろいろな所が変わってきます。ゆっくりと本来の体調を取り戻していただけたらと思います。